謝罪代行アルバイトは依頼者に代わり、
電話や対面で謝罪を行う仕事です。
仕事や対人関係のトラブル、
浮気の謝罪など内容は多岐にわたります。
今回の依頼は、大学の講義をサボりすぎて留年の危機に瀕した息子を持つ親御さんからのもので、僕はその息子の「真面目な親友」という役回りを演じることになりました。
教授の自宅まで同行し、本人の代わりに
「彼がどれほど反省し、深夜まで勉強しているか」を涙ながらに訴えるという、
設定6をツモるよりも難しいミッションです。
重厚な教授の自宅前で、僕はジャグラーの第3ボタンをネジる時のような極限の緊張感に包まれました。
ドアが開いた瞬間、教授の威圧感はまるで1000ゲームハマり中の絶望感に似ていましたが、
僕は必死に「彼は根は真面目なんです!」と熱弁を振るいました。
…この人に会ったのは今日で2回目です。
アルバイト前に、入念な研修を行ったのですが
守るべきことは3つだけでした。
① 現場前に依頼人と役名や生年月日、共有エピソード等の「設定」を矛盾なく答えられるまで刷り込むこと。
② 相手の怒りを遮らず全て受け止めること。相手の話に共感し、感情を吐き出させることで相手の興奮を鎮める。自らの主張は、相手の話が一段落してからが鉄則。
③ 弁護士資格を持たない者が、金銭や法的権利の交渉を行う非弁行為は厳禁。役割はあくまで謝罪と沈静化。
この3つを頭に叩き込んでの実践でした。
その後も、教授に彼がどれほど反省しているかを信じてもらうため、僕は言葉の端々に真実味を込めて訴えかけました。
彼が提出できなかった課題をいかに家でボロボロになるまで書き直していたか。
実際には僕が見たわけではありませんが、
彼が図書館の閉館時間まで机に向かっていた背中や、
参考書を読み込みすぎて指先が真っ黒になっていた様子を、
あたかもまるで自分の目で見たかのように事細かに描写したのです。
すると
教授の表情は最初は険しいままでしたが、
僕が
「もし彼にチャンスをいただけるなら、私が毎日隣について、課題が完成するまで見守ります」
と、友人としての覚悟を口にしたあたりで、少しずつ空気が変わったのを感じました。
僕の必死すぎる姿に、教授も「そこまで君が言うのなら……」と、ついに重い口を開いてくださいました!
演技が功を奏したのか、1時間ほどの面談でなんとか追試のチャンスをもぎ取ることができ、
その瞬間はまさに「ガコッ!」とランプが光った時以上の脳汁があふれ出しました。
この案件の報酬は、事前打ち合わせと移動を含めた4時間の拘束で合計20,000円。
時給に換算すると5,000円という驚異的な数字で、大学生のアルバイトとしては破格の「万枚ペース」と言えるほどの高待遇です。
しかし、精神的な消耗は想像を絶するものでした。
嘘を突き通す罪悪感とバレる恐怖に耐え続けるのは、
設定1の台を終日回し続けるよりも心が削られます。
そんな20000円を握りしめてのハッピージャグラー。