夜明け、自宅の窓辺で、胸の奥に重たい霧がわだかまっていた。
憂鬱で、身体も疲れている。
それでも、行かなくてはならない。
空っぽの腹を抱えて立ち上がると、机の隅で小さな灯火の精が揺れ、
「今日は北斗がオススメ」と囁いた。
その声をお守りに、まずは食べるものを探すことにした。
今日という長い迷宮も、入口を越えれば、きっと小さな光が待っている。
雨が降りしきる土星の輪で、弱気な気分のまま、さくらんぼとスイカを前にひと息。
艶やかなさくらんぼは甘酸っぱく、スイカはみずみずしく、口の中に夏の名残が広がる。
けれど判断が遅れ、どちらから味わうか迷っているうちに、柴犬が皿のそばでくんくん。
ようやく一口ずつ頬張ると、鮮やかな甘みが雨音にきらめいた。
気の迷いを振り返れば後悔も残るが、星の輪に浮かぶ不思議な食卓は忘れがたい。
窓の外は豪雨。
カレー屋に入ると、柴犬と小柄なインド人、そしてデカいババアが、なぜか北斗の拳の台を見守っていた。
設定6。
かんたん。
まだ打てる。
画面の文字は頼もしく、カレーの湯気まで勝利のオーラに見えてくる。
柴犬は台の前で尻尾を振り、店員さんはナンを焼きまくり、デカいババアは水を運んできた。
誰も止めない。
豪雨も止まない。
私は台に礼を言い、カレーにも礼を言った。
ありがとう。
食後、財布だけが暖かい。いい経験をした。夜明けは近い。