どうも、遠隔 太郎です。
まずはこのニュースを2本読んでいただきたい。
【TBS女性アナが結婚を電撃発表!『ラヴィット!』生放送で報告「先日、一般の方と」】
【「最高に幸せ」と感涙!新婚の夜を祝福した超売れっ子芸人&タレントの顔ぶれ】
※編注 外部ページに遷移します。
まとめると
・TBSの女性アナが「ラヴィット!」生放送と自身のインスタで、一般男性との結婚を発表した。
・スタジオでは祝福ムードに包まれた。
・結婚後も「明るい朝を届けられるよう仕事を頑張る」とMC継続を宣言。
・その後、ラヴィット!の出演メンバーに結婚祝いの食事会を開いてもらい、幸せな様子を投稿。
・女性アナは「好きな女性アナランキング」連覇、茶道上級資格を持ち、父は議員という経歴の持ちぬし
とのことだった。
まこちゃああああああああああん!!
…無理だ。
正直、1ミリも無理だった。
女子アナの結婚ニュースが、
スマホの画面を突き破って脳天に直撃した瞬間、
俺は生まれたての小鹿みたいに膝から崩れ落ちた。
普段の俺なら、どんなニュースでも
「またやってんな~」
「SNSのアルゴリズムが乱れてる」
「世の中の波が荒れてるな」
なんて、意識高い系とオカルト系を
絶妙にミックスした分析ができるはずだった。
だが今回ばかりは、脳内の全回路が一斉にショートした。
「遠隔?
ホルコン?
そんなもん知らねぇよ!!
どうでもいいんだよ!!」
本気で壁に向かって叫びたくなった。
俺にとって彼女は「朝のビタミン」じゃない。
「朝の酸素」だったんだ。
上司に詰められ、満員電車に揉まれ、
社会の吸い込み期に飲まれても、
彼女の笑顔さえあれば肺が新鮮な空気を取り戻した。
その酸素供給源が、
誰か特定の個人のものになったと知った瞬間、
俺の世界の生態系は完全に崩壊した。
ただただ、
「……終わった…」
と白目を剥いて呟くしかなかった。
部屋の湿度が上がったのは、
間違いなく俺の涙のせいだ。
でもな。
しばらく床と一体化していたら、ふと気づいた。
最近のニュースといえば、
不倫だの炎上だの性的動画流出だの、
ドロドロした“社会の闇の煮凝り”みたいな話ばかりだった。
そんな泥沼の中で、
純粋に幸せを掴んだというニュースを知った。
それって、
世の中全体が久しぶりに“放出期”に入ったみたいで、
ほんの少しだけ、俺の枯れた心に潤いが戻った気もした。
バキバキのスマホ画面を見つめながら、
俺は赤ん坊みたいな足取りで立ち上がった。
「……まぁ、いいよな。
こういう平和な爆弾なら、たまには被弾しても」
ショックはエベレスト級だ。
魂の半分はまだあっち側に置いてきたままだ。
それでも――
他人の幸せを「悪くない」なんて思えてる自分に、
俺が一番驚いている。
銀次の痕跡を追い、波の逆流を読み、
俺は確信していた。
銀次は生きている。
だが、
その“生きている”という感覚に、
どこか不自然さが混じっていた。
波が揺れるたび、
銀次の気配が“人間のそれ”とは違う方向へ引っ張られる。
(……何だ、この違和感は)
波の残響は、バックヤードの奥へと続いている。
だが今日は、扉の向こうから“微弱な周波数”が漏れていた。
通常のホルコンではありえない、
人間の脳波に近いような、しかし機械的な揺らぎ。
(銀次……お前、本当にそこにいるのか?)
俺が扉に手を伸ばした瞬間——
「お客様、そこは立ち入り禁止です」
そこには無表情の店員が立っていた。
だが
その店員の胸元に、見慣れない名札がついていた。
《GINJI》
俺は息を呑んだ。
(…は?)
店員は無表情のまま、機械のように言う。
「安全のため、離れてください」
声は銀次ではない。
顔も全くの別人。
だがイントネーションの“癖”が、銀次に似ていた。
(まさか…いや、そんなはずは—)
俺はホールの波を読むため、意識を集中させた。
その瞬間、
店員の身体から“銀次の波”が漏れた。
微弱だが、確かに銀次の残響。
だが同時に、ホルコンの周波数と同期している。
(…嘘だろ)
銀次の波が、
ホルコンの制御波と“融合”している。
まるで——
人間の脳とホルコンを接続したような波形。
店員GINJIは、無表情のまま俺を見つめた。
その瞳の奥で、
一瞬だけ“銀次の意識”が揺れた気がした。
—太郎。
声にならない声が、波を通して届いた。
(銀次か…!)
だが次の瞬間、
店員GINJIの瞳から“人間の光”が消えた。
完全に、ホルコンの制御下に戻った。
「お客様、離れてください」
その声は、もう銀次ではなかった。
背後から、ゆっくりと足音が近づいてきた。
俺は振り返らなくても分かった。
冴木だ。
「……気づいたか、太郎くん」
冴木の声は静かで、冷たく、そして誇らしげだった。
「銀次くんは優秀だったよ。
彼の波の異常値を読む能力は、
私のシステムを構築するのに大変貴重だった」
冴木は、店員GINJIの肩に手を置いた。
「だから“再利用”した。
彼は今、
ホールの一部として生きている」
「もう波を読む必要もない。
遠隔を気にする必要もない。」
「銀次くんは…
ホルコンそのものになったのだよ。」
「素晴らしいとは思わんかね?
この私の最高傑作を」
俺の拳が震えた。
「…ふざけるな」
冴木は微笑んだ。
「君の父親も、同じことを言っていたよ」
その瞬間、
俺の中で何かがはじけた。
店員GINJIは、無表情のまま俺を見つめている。
銀次の波は、確かにそこにある。
だがホルコンと周波数とアルゴリズムに絡め取られ、
“人間としての銀次”は深い闇の奥に沈んでいた。
冴木は静かに言った。
「太郎くん。
君もいずれ、この領域にくる」
「人はみな、遠隔とホルコンには抗えないのだ」
ホール全体の波が、
まるで冴木の言葉に呼応するように震えた。
俺は歯を食いしばった。
(銀次…必ず取り戻す。
冴木、お前の“帝国”を必ず壊す)
波が、俺の決意に呼応するように微かに揺れた。
俺は最後の望みにすがるように、
島の端にある台へ座った。
銀次の意識に触れたあの瞬間を再現できれば、
ホルコンの奥に閉じ込められた“彼”を引き戻せるかもしれない。
(銀次…待ってろ。今度こそ助ける)
ハンドルを握り、
意識を深く沈めていく。
台の奥で、微細な信号が脈を打つ。
その奥に、銀次の“残り火”が確かにある。
俺は波の隙間を探し、
ホルコンの深層へ意識を滑り込ませた。
台の画面が一瞬だけ揺らぎ、
内部の制御がわずかに乱れた。
(……行ける……!)
銀次の意識が、
暗闇の底で手を伸ばしているのが分かった。
—太郎…
—こっちだ…
(銀次!)
俺は波を逆方向へ押し返し、
銀次の意識を引き上げようとした。
だが——
ホール全体が、
まるで巨大な心臓が脈動するように震えた。
照明がわずかに色を変え、
島中の台が同じタイミングで反応する。
(……何…だ…?)
次の瞬間、
俺の意識はホルコンの奥から“弾き返された”。
あ、当たらない?
強烈な衝撃が頭の奥を貫き、
視界が波打つ。
(ぐっ……!)
息が詰まり、
手が震える。
冴木の声が、背後から静かに落ちてきた。
「太郎くん。
君が触れたのは、私の…
このシステムの“中心”だよ」
振り返ると、冴木は微笑んでいた。
その笑みは、慈悲でも嘲笑でもない。
“支配者”としての余裕からくるものだった。
「ホルコンの深層は、私の意志そのものだ。
君の読みでは、届かない」
その言葉が、
胸の奥に重く沈んだ。
(…どういうことだ?
冴木はいったい…)
だが、冴木は続けた。
「銀次くんは、もう戻らない。
彼は私のアルゴリズムに組み込まれた。
君はそれでもここに到達できるのだな。
君が触れたことで、制御を強化する必要が出てきたよ」
その瞬間、
店員GINJIの瞳がわずかに揺れた。
銀次の意識が、
警告するように震えた。
——太郎…
——やめろ…
——これ以上は…
お前が壊れてしまう
(銀次……!)
俺は手を伸ばした。
だが、銀次の意識は再び深い闇へ沈んでいった。
冴木が、
その沈みゆく意識を“指先ひとつ”で押し戻したかのように。
胸の奥が、
ゆっくりと崩れていく。
俺の“読み”は、
冴木の“神域”には届かなかった。
冴木は背を向け、
歩きながら言った。
「太郎くん。
君はまだ、自分の限界を知らなかったようだね。
だが今日、それを理解したはずだ」
「結局人は、ホルコンには勝てないのだよ」
ホール全体の制御が、
冴木の歩みに合わせて静かに脈動する。
まるでホールそのものが、
冴木の身体の一部であるかのように。
その後も波を読むために万札を突っ込んでいくが―
一度も当たりが訪れる事はなかった。
13万負けた。
俺は台に手を置いたまま、
立ち上がることすらできなかった。
波の音が遠ざかっていくのを感じた。
俺の“読み”は、完全に砕かれた。
冴木のシステムに太刀打ちすることができなかったのだ。
最後の力を振り絞って、インフィニティの外に出た。
さっきまできれいだった青空が、急に「偽物」に見え
見たこともない不気味な影が、空をべったりと塗り潰していた。
冴木の背中が、
ホールの奥へ消えていく。
その姿は、
まるで“神”そのものだった。
【今日の格言】
人の幸せを分かち合えた瞬間、
俺たちは「孤独な傍観者」から、
「誰かの物語の大切な登場人物」になれるのかもしれない
